微小地震の初期破壊過程。博士3年 吉村三智頼

 地震は、数秒で終わってしまう岩石の破壊現象であるが、その地震の最初の0.1秒ぐらいの部分(初期破壊)に注目すると、とてもおもしろいことが分かる。地震計により観測された地震波形の初期破壊の時間と、地震規模を示すマグニチュードとの関係をみてみる。すると、マグニチュードはその初期破壊の時間の3乗に比例しているように観測事実から見える(Iio(1995)、Umeda(1996)、Beroza and Ellsworth(1996))。一方、Furumoto(1983)では、大地震には破壊の準備過程が存在し、その初期破壊の時間は地震規模に比例することが報告している。そのべき乗則の範囲は、1022乗(初期破壊の時間のほう)もある。これは自然界ではとても稀な現象である。これらの観測事実は初期破壊と最終的な地震規模との間には何らかの因果関係があることを示唆している。また、初期破壊の時間さえ分かれば、地震規模が分かるということになる。これはつまり、そもそも地震現象そのものが地震の事前予測が可能であるかが分かる研究である。よって、この研究の重要性は明らかである。しかしながら、Mori and Kanamori(1996)では、初期破壊は減衰によって見かけ上生成されたにすぎないとする報告もある。


 初期破壊の研究をする上で、減衰の影響を受けず、高精度の観測することが望ましい。鉱山では採掘に誘発されて地震を発生する。南アフリカ金鉱山では、2000~3000mの大深度で採掘が進んでいるため、マグニチュード3の地震が、採掘地域のごく近くでしばしば発生する。時にはマグニチュード5級の地震が発生することもある。したがって、採掘予定の岩盤内に各種センサーを設置すれば、地表からの観測では実現できないような至近距離で、地震の準備過程から発生に至る過程を観測することができる。つまり、半制御地震発生実験が可能である。私の研究では、この鉱山で観測された高精度なデータを扱い、初期破壊がどのような物理過程によって生成されているのかを知ることを目的とする。


初期破壊の解析として、観測波形に対して理論モデルを立て、その理論波形を観測波形に合わせることでどのような物理理論が正しいかを調べる手法を用いる。私の研究では、2つのモデル、初期破壊をもつモデル(Sato and Kanamori(1999))、持たないモデル (Sato and Hirasawa(1973))を考える。初期破壊をもつモデルが正しいとするなら、初期破壊は地震の震源過程を反映したものだと考えることができる。初期破壊をもたないモデルが正しいとするなら、地震発生の物理的背景はなく、初期破壊は震源から地震計に観測されるまでに減衰して見かけ上生成されたものと考えることができる。私の研究では、全部で8つの初期破壊の明瞭な地震波形を解析に用いた。結果は、その8つのうち2つは、どちらのモデルにも合い、残りの6つは、初期破壊をもつモデルでないと説明がつかない波形が見つかった。結論として、Furumoto(1983)を支持する結果となった。