北陸地方の地震活動

(注:このページの内容は2002年8月現在のものです)

1.はじめに

 近年、1995年兵庫県南部地震(M7.2)、2000年鳥取県西部地震(M7.3)と内陸部で大きな直下型地震が発生しています。北陸地方は他の地方と比較して地震が少ない印象を受けるかもしれませんが、死傷者が出るような被害地震に度々襲われています。この講演では北陸地方の歴史的な被害地震や活断層、地震活動について紹介します。

2.北陸地方の被害地震

 過去に起こった歴史的な被害地震の研究には古文書などの歴史史料が用いられます。北陸地方では約500年前からの被害地震の記録が残されています。図1に北陸地方で起こった主な被害地震を示します。マグニチュード(M)7以上の地震だけでも1586年の天正地震(M7.8)、1858年の飛越地震(M7.0)、1948年の福井地震(M7.1)、1961年の北美濃地震(M7.0)が挙げられます。特に1948年6月28日に発生した福井地震は軟弱な地盤上に広がる近代的な市街地のほぼ直下で起きた地震であり、死者約3800名、家屋全壊36000以上の甚大な被害を引き起こしました。この地震を契機として気象庁の震度階に震度7が制定され、その初めての適用例が1995年の兵庫県南部地震であったことは記憶に新しいところです。その他に市街地を襲った地震としては1799年6月29日の金沢地震があります。この地震の推定マグニチュードは6.0ですが、金沢城下を中心に多くの被害が報告されており、激しい地震動があったことが分かります。また能登半島の沿岸部では日本海沿岸の他地域で起こった地震の際に生じた津波によっても被害を受けています。
図1. 北陸地方の被害地震(M6.0以上:日本被害地震総覧より)。

3.北陸地方の活断層

 兵庫県南部地震のように日本の内陸部で起こる地震は活断層で起こります。活断層とは最近の地質時代(約200万年)に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層のことです。図2に北陸地方の活断層の分布を示します。活断層の特徴の1つとして平野と山地の境界に存在することが挙げられます。図2を見ると、富山平野には呉羽山断層、砺波平野には砺波平野西縁断層帯、加賀平野には森本・富樫断層帯、福井平野には福井平野東縁断層帯が存在することが分ります。また山間部の断層は直線上の谷地形を形成し、跡津川断層や庄川断層帯がその例に当たります。断層の長さから判断すると、これらの断層は概ねM7クラスの地震を引き起こす可能性があります。過去に起こった被害地震についてもこれらの活断層が活動した可能性が高いと考えられています。天正地震については庄川断層帯、飛越地震は跡津川断層、金沢地震については森本断層の活動によって生じたとする意見があります。また、図2に示されている活断層は地表で確認されているもののみであり、この他にも活断層が伏在する可能性もあります。2000年の鳥取県西部地震は活断層が地表には認められない場所で起こった地震であることに留意する必要があります。
図2. 北陸地方の活断層(実線)分布図。主要な活断層(太線)については名称も示す。

4.北陸地方の地震活動

 各地方の機関大学がそれぞれ微小地震(マグニチュードが0〜3程度の小さな地震)観測網を展開しはじめた1970年代後半から、詳細な地震活動が次第に明らかになりました。北陸地方については京都大学が地震観測点を設置し、1995年の兵庫県南部地震以降は日本全国で稠密な地震観測網の構築が計画され、北陸地方においても科学技術庁と気象庁により大幅に地震観測点が増強されました。
  北陸地方の地震活動を図3に示します。この図に表れる顕著な地震活動としては1948年の福井地震(M7.1)や1993年の能登半島沖地震(M6.6)の余震、跡津川断層や飛騨山脈に沿った地震があります。白山周辺にも地震が集中して起こっていることが分かります。一方、福井地震の余震を除いては平野部ではほとんど地震が起こっていないことが分ります。これらの地震の震源メカニズムを調べるとほぼ東西に近い方向に圧縮軸を持つ、横ずれ断層か逆断層のメカニズムを示します。すなわち、北陸地方の地殻ではほぼ東西に近い方向に圧縮されていることを示しています。この事実は北陸地方の活断層の走向やずれの方向と調和的です。
 次に地震活動が時間とともにどのように変化しているかを見てみましょう。1980年以降の北陸で起こった最大の地震は1993年2月7日の能登半島沖地震(M6.6)ですが、飛騨山脈や跡津川断層でも最大地震をM4〜5とするような群発地震が起こっています。また、最近では2000年6月7日に石川県西方沖地震(M5.8)が起こりました。図4は図3の範囲で起こっている地殻内部の地震の累積個数を示しています。この図から、1987年の跡津川断層群発地震や1990年と2000年の飛騨山脈群発地震の際に地震数が短期間に増加したこと、1993年の能登半島沖地震に伴う余震による地震数の増加とその減少が見て取れます。この図において最も注目すべきことは兵庫県南部地震発生後に地震発生数の割合(累積個数曲線の傾き)が増加していることです。すなわち、兵庫県南部地震発生後、北陸地方ではそれ以前に比べて地震活動が活発化したことが分ります。このような地震活動の活発化は北陸地方に限定されたものではなく、西南日本(中部地方から中国地方)全体の広域的な現象として捉えた方が良いと思われます。図5に示すように南海トラフ沿いに100〜150年周期で発生するM8クラスの巨大地震の発生50年前から西南日本の内陸部でM6〜7クラスの地震が起こりやすいことが知られています。1995年の兵庫県南部地震や2000年の鳥取県西部地震は来るべき南海トラフ地震の前の地震活動の活発化の現れであり、今後数十年の間にM7クラスの地震が西南日本の内陸部で引き続いて起こりうることに注意する必要があります。
図3. 北陸地方の地震活動
図4. 北陸地方(図3の範囲内)における地震の累積個数の時間変化。
図5. 南海トラフの巨大地震(楕円の領域は震源域を示す)の発生前に活発化する西南日本の地震活動(マグニチュード6以上)。上:昭和の東南海、南海地震前、下:来るべき南海地震前である現在

5.金沢(森本・富樫断層帯)の地震発生確率

 先に述べたように北陸地方でも地震活動は活発化しており、平野と山地の境、すなわち市街地から目と鼻の先に活断層を抱える北陸地方の諸都市にとってはその活断層がいつ活動するのか、言い換えればいつ大地震が起きるのかということは重要な問題です。現在の地震学のレベルでは都市直下で起きる内陸部の地震の短期的予知は非常に困難ですが、活断層の長期的な活動予測について確率を用いて評価することが地震調査委員会によって行われています。現在までに日本全国で19の断層帯の評価が公表されています。北陸地方では金沢市を横切る森本・富樫断層帯の評価が平成13年に終了しました。ここではその結果について紹介します。森本・富樫断層帯とは津幡町中津幡から金沢市小坂町付近に延びる森本断層(長さ13km)と金沢市窪から鶴木町日御子付近に延びる富樫断層(長さ8.5km)をつなぐ総延長約25kmの断層帯です(図6)。断層の長さ(L km)とマグニチュード(M)の間には Log L=0.6M-2.9 という関係があり(松田、1979)、森本・富樫断層帯全てが地震時にずれたとするとM7.2の地震が起こることになります。この断層帯については石川県によって平成8年から10年にかけて調査が行われ、活動度はB級(平均変位量 0.1m〜1m/1000年)、活動年代は約2000年前と6000年前(可能性が高い)であることが報告されています(石川県、1999)。地震調査委員会では最新活動時期を約2000年前から200年前、平均活動間隔を約2000年として森本・富樫断層帯について次のように評価しました(図7)。

「M7.2程度の地震が発生すると推定される。過去の活動が十分に明らかではないため信頼度が低いが(30年確率:ほぼ0%−5%)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」

この地震発生確率は今後の年数を長くとればとるほど高くなります。今後50年間では地震発生確率は0%〜9%、今後100年間では0%〜20%という値をとります。ただ、この確率は前回の地震からの経過年数や平均活動間隔によって大きく変わります。森本・富樫断層帯ではこの両方の数字の信頼性は低いため、ここで出てくる確率の信頼性も低いことを考慮しなければなりません。ちなみに、同じ手法を兵庫県南部地震発生前の野島断層に適用すると30年確率は0.4%〜8%になります。
図6. 森本・富樫断層の分布(石川県の活断層より)
図7. 森本・富樫断層帯における前の地震からの経過年数に対する地震発生可能性と30年確率。

6.白山の地震

 歴史史料などの調査によると、白山は150年の活動期と300年の休止期という周期性をもつと考えられています(守屋、2000)。前回の活動期は16世紀中頃〜17世紀中頃ですから、白山は新しい活動期に入っている可能性があります。火山活動の指標の一つとして火山直下の地震活動が挙げられます。金沢大学では白山直下の地震活動を解明するために、白山山頂部を含む白山近傍で臨時地震観測を行なっています。図8に昨年の臨時地震観測の結果を示します。観測された地震数は42個で、既存の観測網による地震数の8倍の地震を捉えることができました。この図から、白山山頂直下に集中して地震が起こること、震源の深さが0〜2kmに集中することが分かります。このような浅いところに地震が集中するのは火山の特徴です。また、地震の震源決定精度も0.5km程度と従来のデータに比べると著しく改善されました。この臨時地震観測期間中には火山性微動や低周波地震といったより直接的に火山のマグマの動きに関連する地震は観測されませんでした。しかし、白山の下35〜40kmの深さで1999年7月18日と1999年10月21日に低周波地震が発生したことが気象庁により報告されています。これらの低周波地震は地殻とマントルの境界付近で起こっており、白山の噴火と直接結びつけて考える必要はありませんが、白山にマグマを供給する過程を反映していると考えられます。
図8. 臨時地震観測による白山直下の震源分布。丸は地震、四角は観測点を表す。

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