地震豆知識

地震について語るときに頻繁に登場する用語の説明です。

マグニチュード(magnitude)

地震の大きさ(規模)を表す量。震度としばしば間違えられることがある。震央距離、地震波の周期、地震波の振幅、震源の深さの関数として与えられる。マグニチュードと言えば1つの量だと思いがちだが、実はマグニチュードの決定に用いる波の種類や周期により、実体波マグニチュード(Mb)、表面波マグニチュード(Ms)、津波マグニチュード(Mt)、モーメントマグニチュード(Mw)などがある。日本国内の地震で用いられているマグニチュードは気象庁によって発表されるために気象庁マグニチュード(Mj)と呼ばれている。したがって同じ地震であってもマグニチュードが異なる場合がある。例えば1975年の根室沖地震では Mj7.0  Ms6.8  Mw7.5  Mt7.8 であり、周期が短い波によって決定されたマグニチュードほど小さな値をとる。これを「マグニチュードの飽和」という。マグニチュードが1大きくなるとエネルギーとしては約30倍大きくなる。マグニチュード5の地震約1000個分のエネルギーがマグニチュード7の地震1個分のエネルギーに相当する。広島型原爆のエネルギーをマグニチュードに換算すると6程度になる。観測史上最大の地震はチリ地震(1960年、 Mw 9.5)である。2番目はアラスカ地震(1964年、 Mw 9.2)である。マグニチュードの大きな地震ほど断層の長さ、ずれ(すべり)の量、断層面積が大きくなる。前述のチリ地震は約 800 km × 200 km、アラスカ地震は約 500 km × 300 km の面積をもつ。マグニチュードと地震の数には統計的に

log N(M) = a -bM :N(M) はマグニチュードM以上の地震の総和

という関係があり、グーテンベルグ・リヒター(Gutenberg-Richter)の関係という。多くの地域で b=1 になる。つまり、マグニチュードが1小さくなると地震の数は10倍になる。このbの値が地震の前後で変化することが知られており、地震活動の指標としてしばしば用いられる。

震度(intensity)

振動の強さを表す量。昔は体感や建物の被害などで判断していたが、最近は数値的に判断している(計測震度)。この数値は振動の加速度と周期から複雑な関係式を用いて求められる。計測震度と震度階の対応は以下のようになる。

日本で最初の震度階が制定されたのは1884 年。このときは「微、弱、強、烈」の 4 階級であった。その後、6階級に増え、福井地震(1948年)の後に震度7が制定され7階級になった。この震度7が初めて適用されたのが兵庫県南部地震(1995年)である。兵庫県南部地震後に震度5と6を強、弱にそれぞれ2分したため現在の震度階は10階級である。震度分布を図にすると震源の近くでは数字が大きく、遠くなるにつれ小さくなるのが一般的だが、稀に地盤の強弱というような局所的な現象では説明がつかない大規模な震度分布の異常(震源から離れているにも関わらず震度が大きい)が起こる。この異常な震度の領域を異常震域という。これは深発地震の場合に多く、沈み込むプレート内を伝わる地震波が減衰しにくいことが原因である。

前震(foreshock)、本震(mainshock)、余震(aftershock)

前震、本震、余震という言葉は一連の地震活動の中で使われることが多い。前震とは本震に先だって起こる小さな地震のことである。本震は一群の地震のうち特に大きな地震を指す。余震は本震の後に引き続いて起こる比較的小さな地震のことである。1995年の兵庫県南部地震を例にとると、本震は1月17日5時47分に起こった。本震の震源は明石海峡下、約15kmの深さに位置するが、数日前に本震の震源近くでマグニチュード3程度の地震、すなわち前震が起こっている。本震後、神戸から淡路島にかけて直線上に地震が多数発生した。これらは全て余震である。余震の数は時間に反比例するように減っていく。この特徴は19世紀末に大森房吉によって発見された。余震の起こる領域を余震域というが、本震時の破壊域=震源域の決定に利用される。

活断層(active fault)

最近の地質時代(第四紀)に繰り返し活動し、今後も活動すると考えられる断層。地震とは断層の活動(断層運動)のことであるので、防災計画を起てる時には活断層の存在や活動度を調査することが必要となる。地震の震央を地図上にプロットすると活断層に沿って並ぶ(例えば跡津川断層)。しかし一般的には地震の分布と活断層とはそれほど対応がいいわけではない。金沢市内にも森本断層や富樫断層という活断層がある。また、地震に伴う破壊によって生じ、地表にまで達した断層のことを地震断層と呼ぶ。断層面の長さと幅には規則性があり、ほぼ2:1の関係が成り立つ。地震が大きくなるにつれ断層の長さは長くなり、ずれる量も大きくなる。日本の地震断層の場合、地震のマグニチュード(M)と断層の長さ(L km)や断層面でのすべり量(D m)の間にはそれぞれ、
Log L = 0.6 M - 2.9
Log D = 0.6 M - 4
という関係がある。断層の運動する方向には広域性があり、同じ断層では必ず同じ方向にずれる(図はこちら)。このような断層運動の性質は、日本の場合にはほぼ東西圧縮の力が働いているためである。ずれ方により正断層、逆断層、横ずれ断層と区別される。断層に働く力の大きさの関係で正、逆、横ずれのどれになるかが決まる(図はこちら)。断層運動を記述する時は、断層の幾何を表すパラメータとして走向、傾斜、すべり角、断層運動の大きさを表すパラメータとして長さ、幅、すべり量がある(定義はこちら)。この長さ、幅、すべり量と剛性率を掛け合わせた量をモーメントと呼び、地震の大きさを表すのに用いられる。

津波(tsunami)

気象的原因以外で起こる海の波のこと。海域の地震や火山噴火、山崩れなどによる海底の急激な変動が海水に伝えられることにより発生する。日本では三陸沿岸に津波が多く、数万人の死者を出したこともある。最近では北海道南西沖地震の際に奥尻島を襲った津波がある。海岸にいて揺れを感じたら、揺れの大きさに関わらず、高台に避難することが必要。一刻の猶予も許されないのは「いなむらの火」の話で分かるとおり。津波は英語でも”tsunami”と言う(もちろんアクセントは英語風)。

震源(hypocenter)、震央(epicenter)、震源域(source area)

いずれも地震が起こった場所を指す言葉だが若干意味が異なる。震源は破壊が最初に起こった点=地震波が最初に発生した点のことである。震央は震源の真上の地表の点である。ニュースの画面で日本地図上に×印が打たれているが、これは震央を表している。震源域とは破壊が生じた領域=断層面が滑った領域のことである。震源域を正確に決定することは実は難しく、通常は余震分布を基にして決められている。震源域とは有限の大きさを持つ領域であり、破壊が伝わる速度も有限(通常はS波速度の70-80%程度)であるために、震源域の全体に破壊が拡がり終了するまでには有限の時間がかかる。この時間のことを破壊継続時間といい、大きな地震ほど破壊継続時間が長いという関係がある。ちなみに1995年の兵庫県南部地震の破壊継続時間は約15秒である。

地震波(seismic wave)

地震波とは地震によって励起され、地球を伝わる弾性波のことである。地震波には大きくわけると実体波(body wave)と表面波(surface wave)の2つがある。簡単に言うと、実体波とは地球内部を伝わる波のことであり、表面波とは地球表面を伝わる波である。例えば池に石を投げると水面に波紋が広がるが、これは表面波である。実体波にはP波(primary wave)とS波(secondary wave)がある。P波は波の進む方向と同じ方向に振動する波、つまり縦波であり、S波は波の進む方向と垂直に振動する波、すなわち横波である。良く間違えられることだが、上下に揺れる(振動する)波は縦波とは限らない。横波が水平方向に進んでいるならば、それに対して垂直な方向、つまり上下方向にも揺れることになるからである。表面波にも波の進む方向と振動する方向の関係によりラブ波(Love wave)とレーリー波(Rayleigh wave)の2種類がある。

地震波速度異方性(seismic anisotropy)

異方性とはそもそも「方向によって性質が異なる」ことである。一口に地震波速度異方性と言っても、方位異方性(azimuthal anisotropy)と偏向異方性(polarization anisotropy)の2つがある。方位異方性とは地震波の速度がその伝播する方向によって異なることである。例えば同じ領域を地震波が南北に通過する時の速度は 8 km/s だが、東西に通過する時は 7 km/s という場合である。偏向異方性とは地震波の振動方向によって地震波の速度が異なることである(伝播方向は同じ)。例えば鉛直方向に伝わる波があるとき水平面内で南北方向に振動する波の速度が 6 km/s で、東西方向に振動する波の速度は 5 km/s という場合である。これらの異方性は地球内部の鉱物の結晶またはクラックの選択配向(preferred orientation:ある特定の向きに結晶軸やクラックの法線が揃うこと)によって生じる。どの方向に選択配向するかは地球内部の応力・歪み場によって支配されているので、地震波速度異方性を調べることにより逆に地球内部の応力・歪み場を知ることができ、さらにはマントル対流などの地球内部の流れの場についての情報を得ることができる。

なゐふる

地震のこと。日本には地震が昔から多く、古典の中にもたびたびこの言葉が登場する。文献に残っている一番古い地震の記述は
416 年 『日本書紀』 允恭天皇の項
五年秋七月十四日、河内国なゐふる
である。「な」とは”土地の意味”であり、「ゐ」は”存在”をあらわす”。すなわち、そこにある土地が震える=地震、ということになる。他にも有名なところでは『方丈記』、『平家物語』、『宇治拾遺物語』、『大鏡』にも地震に関する記述があるので古典の好きな人は探してみましょう。

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